きっかけは「訴求軸のズレ」。ferret Oneの事例に学ぶ、サイトリニューアルへの踏み切りどき
Webサイトの役割は年々重要性を増しており、ビジネスをする上では必要不可欠な要素となっています。
しかし、最新の情報に更新されていないことや分かりづらい情報構造のUI/UXが原因で、本来の力を発揮できていないサイトも少なくありません。
サイトの「目的」や「社内で期待される役割」の変化に対応できていますか?
提供サービスや機能が増えると、改めてサイト全体の情報整理を行うことも必要になります。
ferret Oneも、新機能の開発や市場ニーズの変化に伴うバリュープロポジションの変化を反映させるため、何度かサイトリニューアルを行ってきました。
この記事では、ferret Oneで2022年末〜2023年上旬に実際に行ったサイトリニューアル事例を通じて、リニューアルに至った背景や効果、プロセスを詳しくご紹介します。
今回は、ferret Oneのマーケティングチームのメンバーにインタビューをしてきました!
マーケティング統括の林さん、サイト周り・コンテンツ制作を担当する中西さん、サイト周りと広告運用を担当する佐藤さんです。
この記事を読むことで、どのような場合にサイトリニューアルを検討すべきか、そしてリニューアルを成功させるためのポイントを理解できます。
サイトリニューアル後の検証ポイントや、PDCAサイクルを回し改善する方法について、ぜひ参考にしていただけますと幸いです!
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.サイトリニューアルの背景
- 3.サイトリニューアル前の課題
- 4.リニューアルの目的
- 5.リニューアルのプロセスについて
- 5.1.プロジェクトの進行
- 5.2.リニューアルのステップ
- 6.リニューアルの成果について
- 7.まとめ
はじめに
今回はferret Oneのマーケティング担当の3名にインタビューをしました!
林さん(マーケティング統括):
ferret Oneのカスタマーサクセス部門の立ち上げからセールス部門の責任者を兼任後、パートナーサクセス推進室の立ち上げを推進し、現在はマーケティング部門の統括をしています。今回は社長直下の形でferret Oneのサービスサイトリニューアルを主導しました。
中西さん(サイト周り・コンテンツ制作担当):
現在はサイト周りの改善やコンテンツ制作を担当しています。WebサイトからのMQL(Marketing Qualified Lead)創出をミッションとして持っているため、CVR向上のためのサイト改善と合わせて記事のリライトやホワイトペーパーの作成などのコンテンツ制作を行っています。
佐藤さん(サイト周り・広告運用担当):
現在はサイト周りと自社広告の運用、SNS運用を担当しています。サイトに掲載するプレスリリースなどの作成・掲載やSNSでの発信を各部署と連携して行なっており、自社の広告運用を実施する中でLPの改善や配信内容の調整等も担当しています。主に施策効果を最大限に引き出すための取り組みをしています。
サイトリニューアルの背景
岩本:今回の2022年末〜2023年上旬のサイトリニューアルでは、デザインや訴求、構成を大きく変更したように見受けられます。
ここ数年ではあまりなかった大きめのリニューアルかと思いますが、その背景はどのようなものだったのでしょうか?
林さん(以下、林):以前のferret Oneは『BtoBマーケティングをこれ1つで』というオールインワンツールという見せ方の訴求を行っていました。
しかし、2022年10月頃のデータ分析により、実際に受注できているのは『CMSツールとしてのニーズ』が中心であることが明らかになりました。
この結果を受け、サービスの訴求軸を変更したものの、無料・安価なCMSツールとの比較が増え、価格競争に巻き込まれたことが原因で商談受注率が低下する状況が続きました。そこで、改めて訴求軸の見直しが必要となり、大規模なサイトリニューアルを決定しました。
サイトリニューアル前の課題
岩本:リニューアル前の課題としては、大きくどのようなものがあったのでしょうか?
林:リニューアル前のサイトでは、『オールインワンツール』としての訴求から、『CMSツール』『MAツール』というツール単体での打ち出し方に変更しましたが、商談受注率の向上は見込めない状況でした。
コンバージョン率は維持していたものの、商談で比較的安価なツールとの比較検討で負けてしまう状況が続いていたため、ツールの提供以外にも価値がある「ferret One」の価値が上手く伝わらない訴求になっており、マーケティング施策の効果が十分に発揮されていない状況でした。
岩本:実際にコンバージョン率は低下していなかったものの、商談から受注に繋がっていないのであれば訴求を見直すべきですね。商談分析の重要さを改めて感じます!
リニューアルの目的
岩本:今までお伺いした内容から言うと、サイトリニューアルの目的は「訴求軸の変更と商談受注率の向上」でしょうか?
林:そうですね。今回のサイトリニューアルのメインの目的は訴求内容の変更にありました。先ほど少し触れましたが、ferret Oneが提供できる価値を明確に伝えることを重視しました。具体的には、ツール推しの訴求からノウハウ・コンサルティングや利便性を強調する形でのリニューアルを行いました。
例えば、以下のような見せ方を入れてみていましたね。現在公開中のサイトではまた少し修正されていますが。
主にはferret Oneが提供しているBtoBグロースステップ教科書や初期の戦略設計、既存顧客向けのTipsセミナーや伴走サポートなどですね。
岩本:なるほど。ferret OneはCMSツール単体というよりも、初期の戦略設計や伴走サポート(マーケティングサクセスパック)、その他のソリューション提供なども行なっているので「CMSツール」という訴求だと少し価値が薄れた形で伝わってしまいそうですね。
リニューアルのプロセスについて
プロジェクトの進行
岩本:実際にどのようにサイトのリニューアルが進んでいったのか教えてください!
林:今回のサイトリニューアル時には、新たにプロジェクトチームが編成されました。
主に私が主導する形をとっていましたが、主なメンバーとしては、私、社長、デザイナー、マーケ部長が参加しており、実際に商談を担当しているセールス部門の意見も取り入れながら進行しました。
メインとしては私の方で訴求等の設計をして、エキスパートデザイナーがすぐに形としてデザイン案やferret Oneのプレビュー画面を見せてくれていたので、そこのやりとりは非常にスムーズでしたね。社長にも「こうするつもりだ」というのを見せることができて、フィードバックを貰いやすかったです。
岩本:やはり、商談分析をした上で実際にお客様と接点を持っているセールスの肌感や意見を取り入れるのも大切ですね。
リニューアルのステップ
岩本:リニューアルのステップとしてはどのように進んでいったのでしょうか?
佐藤さん(以下、佐藤):リニューアルのステップとしては、以下のように進行しました。
- 現状分析:商談受注傾向・商談受注率などの課題の把握、顧客ニーズの分析
- 計画策定:今後の事業方針・リニューアルスケジュールの策定
- 訴求内容・情報構造の確定:事業方針/ペルソナ/ターゲットを考慮したワイヤーフレーム作成
- デザイン作成・選定:主要ページデザイン作成・各所からのFB反映
- テスト・公開:主要ページのリンクチェックを行い順次公開
まず、1の現状分析については商談・受注顧客分析をメインに進めました。
弊社はSFAにSalesforceを利用しているので、セールスが入力してくれていたSalesforceの商談データから分析を始めました。Salesforceの入力項目に「受注・失注理由」や「ニーズ」という項目を用意していたので、この辺りの分析は進めやすかったです。
そのようにして受注顧客のニーズを深掘りすることから始め、その後商談した全顧客のニーズの洗い出しを行っていきました。特に、失注した顧客については、顧客と最も多く接点を持っている営業チームへのヒアリングも行い、どの要因が失注に繋がったのかの詳細を明らかにしていきました。
商談受注傾向の洗い出しをして「CMSツール」としてのニーズでの受注が多かったのは事実ですが、「オールインワンツール」から「CMSツール」という訴求に変更した後の受注率をみた時に成果が芳しくありませんでした。
結果として「ノウハウの提供」と「コンサルティングサービス」を前面に出すことで、競合との差別化を図ることができました。これによって顧客からの評価も向上し、受注率が改善されました。
リニューアルの成果について
定量的な成果
岩本:サイトリニューアルの前後で、サイトの訴求は具体的にどのように変わりましたか?
佐藤:実際のリニューアル前後のファーストビューはこのような形に変更しました。
リニューアル前のツール訴求では実際のCMSの画面を見せていたところから、リニューアル後はキャッチコピーを『リード獲得のお困りごとをまるっと解決』として、ファーストビューの下についてはコンサルティングやノウハウ提供の内容を並べていましたね。
現在公開中のサイトも2023年のリニューアル後からまた微修正していますが、ファーストビュー下の構造は大きく変えていません。
▼リニューアル前
▼リニューアル後
岩本:サイトリニューアル後、定量的な成果は見られましたか?
中西さん(以下、中西):サイトリニューアルでの訴求の変更が上手くハマり、商談率・受注率の向上も見られました。その結果リニューアル後の2023年のセールスの成果としても商談・受注数は年間を通して100%達成という結果になりました。
また、訴求変更後のサイトリニューアル前後1ヶ月の数値の変化としては、サイトの訪問数・PV数ともに+50%、コンバージョン率も+44%向上し、平均滞在時間や直帰率も改善しました。結果としてサイト全体の数値は良好でした。
このように数値が向上した理由としては、2つあるかなと思います。
まず、新しい訴求内容がターゲットユーザーにしっかりとリーチできたことです。これにより、サイトへの新規訪問者やコンバージョン数の増加が見られました。
また、リニューアルによってサイト内の見せ方や導線も整備され情報が探しやすくなったこともあり、ユーザーのサイト内での行動が活発化しました。
主にこの2つの改善により、サイトの訪問数やPV数だけでなく、コンバージョン率の向上や滞在時間の延長、直帰率の低下といったポジティブな変化が生まれましたね。UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上が直接的に成果につながり、サイト全体としてのパフォーマンスが大きく改善されたと思います。
ですが、今回のリニューアルと同時にferret Oneのプラン変更もあり、『料金ページ』では複雑化した料金・プランを見せない形にしていたので、『料金ページ』からの「料金表ダウンロード」のコンバージョンのみ半減していた結果となりました。
▼リニューアル後
▼リニューアル後の改修(プランを見せる形に)
岩本:『料金ページ』はリニューアルの影響が大きく出ていて、やはりユーザーの興味を引くポイントなんですね!
初期費用とツール月額費用だけの見せ方だと、イメージも湧きづらく、例えば『月額費用10万円〜』の中に、ferret Oneからの提供物として何があるのか?をイメージさせられるといいんですね!
中西:そうですね。複雑化したので見せ方をシンプルにしたのですが、ここについては詳細を出す方がいい、ということがその後の数値でも結果としてわかったので、良い経験でした!
ちなみに、2023年のリニューアルから現在公開中のサイトについては、「サービスサイトTOPのFVにCTAを見せ、企業ロゴも見えている形になればCVRが向上するのではないか」という仮説から、以下を実施しました。
- CTAをファーストビューに見えるようにする(元に戻す作業)
- 導入企業ロゴを入れる(現在のお問い合わせやサービス資料ダウンロードなどのメインのフォームに企業ロゴを入れたところコンバージョン率が向上したことから、メインビジュアル下にも設置)
これらを実施したことで、コンバージョン率は2.58%→3%に上昇しました。
▼左カラムに企業ロゴを入れた資料ダウンロードページ
岩本:すごいですね!素敵なTipsをありがとうございます。お客様にもおすすめしてみます!
サイトリニューアルの際に意識して取り組んだこと・成功に繋がった要因
岩本:細かい数値まで教えていただきありがとうございます!
最後に、サイトリニューアルの際に意識して取り組んだことを教えてください!
林:今回のferret Oneのサイトリニューアルは訴求内容の変更を中心に行われ、2023年は商談受注率の向上も実現し、サイトの結果としてもコンバージョン率の向上や各種数値の改善といった成果を出すことができました。
プロジェクトチームの一貫した取り組みと、リニューアル後のPDCAサイクルの実践が成功の鍵となりました。
成功に繋がった要因としては、商談受注率の分析とターゲット分析を細かく実施し、ターゲットに刺さるアプローチに変更したことが挙げられます。
サイトのパフォーマンスを上げるためにリニューアルしたわけではなく、重要指標は「商談受注率」です。
『サイトのリニューアル』が目的ではなく、その手段の一つがサイトリニューアルだったということです。
岩本:確かに。「サイトリニューアルしなきゃ!」というよりは「目的を果たすための手段」としてのサイトリニューアルですね。
貴重なお話をありがとうございました!
まとめ
今回は、ferret OneマーケGへのインタビューを通して、ferret Oneが実施したサイトリニューアルの背景、プロセス、そしてその成果について詳しくご紹介しました。
リニューアルの背景や課題、目的などの前提部分からサイトリニューアルの具体的な手順や成功の要因についてインタビューしましたが、理解は深まりましたでしょうか?
今回のサイトリニューアルのプロジェクトでは、受注顧客と失注顧客の詳細な分析から始まり、マーケティング戦略の転換を経て、ツール訴求からノウハウ・コンサルティング訴求への変更が行われました。
当初の変更で一時的に成果が上がったものの、定期的な検証を行い、数値が低下した部分については迅速に改修を行うなど、継続的な改善活動が必要だということも、改めて勉強になりました!
今回のインタビューからも明らかですが、サイトは作って終わりではありません。PDCAサイクルを回し、定期的な分析と改善を繰り返すことが重要です。
サイトリニューアルを検討している方や、現行サイトの改善を考えている方にとって、今回のインタビューが参考となり、より良いサイト運営の一助となれば幸いです!
サイトのリニューアルを検討しているお客様はぜひご相談ください!