
ferret Oneのマーケチームが、自らのMAツールをferret Oneに移管するまで〜PMインタビュー〜
年間782万円のコストと、「ハウルの動く城」と化したMA運用
梨木: まず、これまで使っていたMAツールの利用実態や、利用におけるネックがどこにあったのか教えてください。
見山:最も根幹の課題として、コストが最大のボトルネックでした。
MAツール単体で年間約800万円もの費用がかかっていたんです。その上、毎年約10%ずつ値上がりしていました。当然このコスト高はマーケ部内でも問題視されていましたが、マーケ部だけでなく、経営層でも毎年アジェンダに上がっている問題でした。金額が金額なので。
しかし、いかんせん移管工数が重すぎて、「やりたい」とは思いつつも実行できずに毎年頓挫する…そんな状態が3年ほど続いていました。
運用面も深刻でした。額面には表れないところで、新担当者のオペレーション把握コストや教育コストがとんでもなく高くて。メール配信の担当者が変わるたびに、操作を毎回ゼロから教えないといけなかったり、何か新しい仕組みを作る上で、既存の仕組みと干渉しないかを毎回確かめる必要がありました。その度に複雑なオートメーションの設定などを紐解き、慎重に確認していました。
私たちの知らぬところでメールが飛んでしまっていないか、インシデントを生んでしまうリスクがないかを入念にチェックする必要があったからです。私自身も、「えっ、こんな設定が...」と裏側の記述を見て知ることも多々ありました。
言うならば、歴代の担当者が積み上げたロジックが「ハウルの動く城」のような状態になっていました。

見山:見た目は“城”として動いているものの、増改築を繰り返した結果、どこが本体でどう動いているのか誰にも説明できない。
「この設定を変えると別の機能に影響が出る」という恐怖から、ドキュメント管理も難しく、個人の記憶に頼らざるを得ない状態でした。
一番つらいのは、誰かが苦労して紐解いても、その人がいなくなればまた中身が分からなくなることです。ただのブラックボックスではなく、担当変更のたびにゾンビのように何度でも蘇る。こうした現状を読み解く工数は過小評価されがちですが、実際には「今自分は何をしているんだろう」と自問自答するような無駄な時間が多発していました。
住民(社内メンバー)もこの城の歪さを自覚していたのですが、それ以上に慣れが勝ってしまっていたので、「別に今のままでも良くない?」という心理も持っていて、「動くこと自体が目的」になっていました。決して壊れていたわけではないんですよ。ガタガタ言いながらも歩くことはできていたので、この城を建て直そうという機運にもなりづらかったんですよね。
梨木: まさに、払ってしまった費用や労力に執着して適切な判断ができなくなる、サンクコストの罠に陥っていた状態と言えそうですね。
見山: サンクコスト効果とはまさにこのこと。当時の私たちはまさにその渦中にありました。
「これまで毎年800万円近く払ってきたんだから」「何年もかけて改修してきたんだから、いまさら辞めるのも億劫」という心理が無意識のうちに働いていたのだと思います。本来、経営判断として見るべきは「これから先、いくら得をするか」であるはずなのに、負の遺産を「資産」だと思い込んでいたことが、一番のブレーキだったのかもしれません。
こういった事情もあり、負の遺産の蓄積をいつか断ち切る必要があると思いながらも、なかなか足を踏み入れられずにいました。
しかし、自社商品であるferret OneのMA機能が必要十分になってきたことで、私たちの代で断ち切る覚悟を持ちました。
専門家の知見と現場の声を結集した「移管プロジェクト」の実行
梨木: そのパンドラの箱を開けるために、どのような体制でプロジェクトを進めたのでしょうか?
見山:私がプロジェクトリーダーとなり、かつIS(インサイドセールス)側のマネージャーとして、運用に関わっている代表者を集めてプロジェクトを組閣しました。 プロジェクトメンバーは私に加え他3名いました。
技術面では、1人目:Salesforce設計の担当者に、これまでのMAとSalesforceでつないでいた複雑な座組みが、ferret One MAとワークフロー機能だけで実現可能かどうかの検証とロジックの組み替えを担ってもらいました。
実務面では、2人目:マーケティングのデータ管理担当者がMQLデータ管理周りの業務洗い出しや、フォームの設定変更、ワークフローの設定変更などの具体的な切り替え作業を担当してくれました。
また、3人目:メール配信の実運用担当者が、これまでのMAで利用していた配信セグメントデータの引き継ぎと、新しい環境での配信設定を担当しています。
私の主な役割は3つありました。1つ目は、現場のメンバーに丁寧にヒアリングし、考慮漏れがないか執拗に確認すること。2つ目は、インサイドセールス(IS)側の業務要件を洗い出すこと。そして3つ目が、Salesforceとの双方向連携を進める上での6万件のリードデータおよびデータ項目のクレンジングです。

梨木: プロジェクト全体の工数やスケジュール感はどのくらいかかりましたか?
見山: 全体では1月にゆるやかに動き出し、11月に完全切り替えが完了しました。 これは単にメール配信ツールを載せ替えるだけでなく、Salesforceとの双方向連携の完成までを含めた期間です。一時停止していた時期もありましたが、実質的に集中して動いた工数は3〜4ヶ月程度でしたね。
週1回30分の定例ミーティングを軸に、進捗確認や実装タイミングの決定などの細かい調整を積み重ねていきました。
各メンバーは移管プロジェクト期間中、業務時間の約15%をこのプロジェクトに充ててくれました。通常業務と並行しての進行故、リソースの調整は必要でした。が、このプロジェクトにコミットするというリーダーとして意思を伝え続けたこと、および新規の実装や設定は行わないという方針で、選択と集中を行いました。
おかけでプロジェクトはスケジュール通りに進み、以前のMAツールの契約期間に間に合わせる形で、ferret One MAへの移管を完了できました。
梨木: 具体的に「ここは苦労した」という作業はありましたか?
見山: チャネル情報をSalesforceへ転送する設定を、これまでのMA経由からferret One MA×ワークフローでの実装へ移行するのには苦労しました。
移管プロジェクトにあたり、「このデータ転送や設定は本当に必要なのか?」という精査を行っていたのですが、その中でもCVした際の流入チャネルの情報は、施策の振り返りの中核となる情報なので外すわけにはいかず。それはferret One MAの基本機能でも対応が難しいところでした。
これまではオートメーションルールを組んで無理やりキャンペーン名にチャネル情報を詰め込んでいたのですが、その運用を廃止し、リードソースを正確に返す実装に切り替える必要がありました。
特にこれまでのMAツールで行っていた判定ロジックをどう再現するかには難航しましたが、そこは上述のSalesforce設計担当者の力を借りて乗り越えることができました。 結果として、シンプルでデータ分析も十分にできる仕組みにアップデートすることができました。
年間約500万円のコスト削減。そこから得た学び
梨木: プロジェクトを通じて得られた成果について教えてください。
見山: 成果としては2つありました。
1つ目は、約500万円のコスト削減です。もはや説明不要だと思いますが、全社の営業利益を達成させる上で、非常に大きなインパクトにつながりました。
2つ目ですが、このプロジェクトを遂行できた結果として、コスト削減の効果以上に「オペレーションの効率化」に手応えを感じています。例えば、今まで手動で転記していたMQL通知を自動化したことで、レポーティングが即時化され、情報の漏れもなくなりました。
私はベーシックで一度産休を経た後に復職しているのですが、戻ってきたときに驚いたのが、Salesforceに新しい項目が新設されていて、その値を変更するとユーザーへメールが飛ぶ設定が知らない間にできていました。
当時の運用者からすれば最適な手法だったのかもしれないですが、このマニュアルを知らない人が触れると誤配信のリスクも伴ってしまう、非常に脆いものでした。こうした潜在的なリスクを潰すことで、『守りの施策』を完遂できたことが最大の成果だと思っています。
費用対効果を計算する時って、施策の「実行」にかけるコストはちゃんと見積もられる一方で、その手前の現状把握や準備のコスト、リスクが起きたときのリカバリーのためのコストがそもそも無いもの扱いにされがちです。
500万円のコスト削減はあくまで額面の話であって、実際にはその倍ぐらいの追加コストを未然に防いでいると考えています。

梨木:ferret Oneでマーケティングに尽力されているユーザーの皆さん向けに、このプロジェクトを通じて得られた学び・教訓があれば教えてください。
見山: 1つ目は、トップ層を巻き込んでやりきる体制を作ることの重要性です。長年頓挫していたこのプロジェクトをやり切れたのは、トップの強い意志があったからです。私たち現場からもMA切り替えの起案はしていましたが、最終的に本プロジェクトは、経営層のトップダウンによって動き出しました。コスト削減に圧がかかっている組織であれば、経営層は毎年の値上げに対して必ず「え?」と思っている瞬間があるはずです。
この記事を見ている経営層の方向けに言うと、この手のMAやCRMの移管プロジェクトは、トップダウンで上位下達で降ろした方が、はるかに早く・スムーズに進みやすいです。
対して現場の方向けに言うと、いかに上位のレイヤーの人を早く・強く巻き込めるかが、プロジェクトの承認およびスケジュール通りの進行の成否を左右します。早い段階で、あるいは経営層がそういったコスト意識が高まってきたタイミングを逃さず、移管によるメリットを起案することが重要です。
2つ目の学びとして、本当の意味での1to1で出し分けるような複雑な仕組みを夢見るより、まずは「セグメントをやり切る」ことがBtoBマーケティングにおいて重要だという教訓を得ました。
今の時代、AIによってよりパーソナライズ化されたコンテンツが求められていますが、だからといって当時の状況に最適化しすぎた複雑なオートメーションやスコアリングを組んでしまうと、事業環境が変わった瞬間にまた「秘伝のタレ」化して運用が困難になるリスクがあります。
過去のアイデアは、その時の制約や課題と密接に関連しているため、状況が変われば有効性も変わる。だからこそ、特定の手段に固執せず、シンプルに保つことが望ましいんです。
具体的には、セグメントは注力している業種や企業規模(エンタープライズ、SMBなど)でシンプルに分け、それに対して「濃いコンテンツ」をしっかりと作成して、メールでデリバリーする。それすらできていないうちに、複雑なオートメーションには絶対手を出すな、と今は思っています。

MAのリプレイスを考えている人へのメッセージ
梨木:最後に、この記事はマーケやセールスのメンバー・あるいは管理職レイヤーの方までたくさんの人が読んでくださると思います。読者の皆さんへのメッセージはありますか?
見山: まず1つ目に、MAツールなどのシステムでコミュニケーション施策を管理運用する人の苦労や、リスクを抑えながら成果を生み出そうとする「守り」の取り組みがもっと評価されるべきだと思っています。
IS(インサイドセールス)は商談数が目標になるので、どうしても目の前の獲得を最優先にする「攻め」の施策に意識が向きがちです。しかし、その裏でマーケターは、一回でもミスすれば取り返しのつかないインシデントになる「守り」の業務を、地味ながらも必死に担っています。この損な役回りへの理解が、マネジメント層や経営層の中でもっと進めば、利益を出すための最適なコスト配分の考え方もアップデートされるのではないかと思います。
多機能すぎるMAツールで運用が複雑化するほど、こうした守りのリスクは常に高まります。誰も知らぬ間に複雑なオートメーションでメールが送られ、顧客体験が損なわれているかもしれません。
2つ目に、複雑に組み込まれた手段・手法は事業方針や目的の変化とともに陳腐化しやすく、時間をかけて組んだ複雑なオペレーションほど、その賞味期限も短くなってしまうということです。
スコアリングやパーソナライズ化は、その当時の戦略・戦術に照らし合わせれば最適な手段に見えたり、とりあえず新しいものだからまずは無批判で取り入れてみようというケースもあると思います。
その時の制約条件や課題と密接になっているからこそ、すごく高尚なアイデアに見えるし実際そうだったかもしれないですが、これは非常に限定的な課題や制約条件下でのみワークするものとも取れます。具体化されすぎた分、状況が変われば最適な手法ではなくなってしまう、ということも往々にしてあります。
BtoBは、BtoCと比べて顧客の絶対数は少ないので、その点も加味して複雑な設計が必要かの検討も必要です。

見山: 私たちはシンプルなferret One MAにリプレイスすることで、そのリスクを根本から低い状態に変えました。私たちはマーケチーム内で自力で進めたので、それゆえの苦労もありましたが、ferret OneのカスタマーサクセスチームにはMA運用管理のプロもいますし、データ設計に詳しいパートナーもついています。私たちの苦労もナレッジとして、今のカスタマーサクセスチームのサポートの進化に活かされています。
皆さんも、今の世代でその「負の連鎖」を一緒に断ち切りましょう。
梨木:貴重なお話、ありがとうございました!
ferret One MAはすでに100社以上のお客様に導入いただいており、中には年間800万円以上の予算を浮かせられたお客様もおります。
他社MAツールからのリプレイス支援実績もすでに50社以上行わせていただいており、自社の経験プラスお客様ご支援の経験から、どれぐらいの時間・リソース・コストが必要で、どれぐらいの効果につながるかのご支援も可能です。
Salesforceとの双方向連携や他社のCRMとの双方向連携も、直近のワークフロー機能でできるようになり、その導入支援メニューおよび作業代行メニューも用意しています。

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今後ともferret Oneを宜しくお願いいたします。



